古墳空中探訪 奈良編
著 者:梅原章一 著 今尾文昭 解説
出版社:新泉社
ISBN13:978-4-7877-1803-7

古墳空中探訪 奈良編

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

高田高史 / 神奈川県立川崎図書館
週刊読書人2021年1月22日号(3374号)


 先日,奈良まほろばソムリエというご当地検定に合格した。ソムリエは最上位なので,公式テキストに出ていない知識も求められる。当然,あれやこれやと調べていくのだが,その過程においてびっくりしたことがある。インターネットでの情報収集だけで,事足りた。一昔前なら県別の地名辞典をめくって調べていた事柄も,むしろ,インターネットの情報のほうが親切で,辞典のほうが古くて使えない印象を持った。「俺は図書館での調査をテーマに,何冊か本を書いているんだけどな」と,複雑な気持ちになってしまった。

 さて,そうした期間に手にとったのが,今回紹介する『古墳空中探訪 奈良編』で,奈良県内の古墳を空撮した写真集である。著者の梅原章一氏は,1970年代から古墳の空撮を始め「今までに撮影飛行した回数は数知れず」(著者紹介より)だという。収録されている写真は,1970年代から2010年代までと幅広く,数多くの作品の中から「この古墳なら,これ」というベストショットを厳選していったのであろう。「あとがき」によると,梅原氏は,新緑の季節の雨上がりの「山辺の道」沿いの古墳が気に入っているそうである。

 古墳を空から見ると,そのかたち,地形との関連などが理解しやすい。インターネットにある航空写真でも,そうしたことはわかる。しかし,この本の写真からは,季節や時間,天気,風なども感じられ,セスナに乗って古墳を眺める追体験ができた気分になった。著者の経験が凝縮された一冊だからであろう。

 そのような付加価値的な魅力を持つ本が,今の図書館には必要であるように感じた。

 もっとも千数百年を経ている古墳の被葬者から見れば,些細なことかもしれないのだが……,と結ぼうとしたのだが,いやいや,案外,大きなことであるように思えてきた。