ねこもかぞく ほんのり俳句コミック
著 者:堀本裕樹,ねこまき(ミューズワーク)著
出版社:さくら舎
ISBN13:978-4-86581-221-3

ねこもかぞく ほんのり俳句コミック

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

藤井のり子 / 和洋九段女子中学校高等学校
週刊読書人2021年1月29日号(3375号)


 俳句は十七音で表現するため,詠むのは苦労するが,鑑賞をするときにはその言葉の少なさ故に,想像の広がる余地を残してくれているように思う。句だけが並んだ俳人の句集を読むのも,また自分なりの鑑賞をしてみるのも良いものだ。

 しかし,少しリラックスして俳句を楽しみたいときや,他の人が俳句をどのように鑑賞するのか知りたいときもある。

 そこでこの本である。俳人の堀本裕樹氏と,夫婦ユニットによるイラストレーターであるねこまき氏が,一つの句をそれぞれに解釈している。堀本氏は俳句から思い浮かんだことをエッセイやショートストーリーといった文章で,ねこまき氏は『まめねこ』(さくら舎 2013~)シリーズや『ねことじいちゃん』(KADOKAWA 2015~)シリーズなどでおなじみの,ほんわかとした猫の登場するイラストで表現している。自分では思い至らなかった解釈が,それぞれの視点で示される。

 この本で取り上げられている俳句は,家族が詠み込まれているか,家族の存在が感じられるようになっている。もちろん犬や猫といったペットも家族である。

 動物を飼うには責任が伴う。だから飼いたくても飼えない人もいるだろう。私もその一員である。そのため,SNSなどで紹介されている愛らしい動物の写真や動画を,親戚のおばちゃんのような気持ちで眺めさせてもらっている。近頃のままならぬ日々,猫ちゃんやワンちゃんにリモートワークをじゃまされている投稿写真を見て,ひととき心を和ませている方もいらっしゃるのではないだろうか。本書のねこまき氏のイラストは,そういった人の需要も満たしてくれているように思う。もちろん肩肘張らず俳句に親しむにもおすすめできる。