CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識
著 者:シオリーヌ(大貫詩織)
出版社:イースト・プレス
ISBN13:978-4-7816-1937-8

性の話-私たち大人にできること-

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

伊藤英梨 / TRCデータ部
週刊読書人2021年2月19日号


 生理というものを〝体験〟する前。概要を聞いたところで、そのなんだかよくわからない現象に対しては漠然とした不安しかなかった。そんな折に地域の図書室で見つけた生理に関する子ども向けの本。行くたびに隅の席でそれを読んだ。家で読んだ記憶があまりないのは、借りるのが恥ずかしかったからだろう。最近でこそ、生理を題材にした漫画や映画が発表されるなど、体に関するほかの事柄と同じように扱われるようになってきてはいる。しかし大々的に取り上げられるほど、逆にそれがまだ特別なことなのだといわれてしまっているようで、それはそれで、ある種の違和感を覚えるのも事実だ。

 本書を手に取った時、実にちょうどよく、心地のいい本だと感じた。本書は、助産師であり性教育YouTuberである著者が、若い世代や子どもたちと接する大人に向け、これだけは知っておいてほしいという性の基礎知識をまとめたものである。「性の話を、もっと気軽にオープンに」というモットーの通り、全体に気負いがなく、実に自然に読むことができる。

 気軽にと言っているが、中身が薄いわけではない。生理や射精といった性にまつわる身体のしくみにはじまり、避妊や性感染症、性的同意、デートDVといった、パートナーシップに関する問題など、性教育といわれて一般にイメージすることは漏れなく記載されている。その上で本書は、セクシュアリティの多様性や、ジェンダー観などの問いを通して、「自分らしく生きる」とはどういうことか考えるきっかけを示してくれる。書かれているのは、性に関する基礎知識だけではない。「人生を自分の意思で選びとろう」というメッセージだ。

 装丁もいい。サブタイトルにこそ「性」という語が入っているが、「CHOICE」というタイトルとシンプルな表紙は、性に関する話題に気恥ずかしい印象を持っている人でも手に取りやすいものであろう。また、性を扱う図書によくある「男の子の」「女の子の」といった一つの性別に特化した内容ではなく〝すべての性〟に向けて書かれていることも、本書の特長としてあげられる。

「今こそ、大人が価値観をアップデートしなくてはならない」という著者の言葉通り、大人がハッとさせられる箇所も多い。ルッキズム(外見至上主義)などについては、今までその文化の中で息をしてきた私たちこそ立ち止まって考える必要がある問題だ。一方、若い世代から大人まで、という本書の特性上、立ち寄った書店では、教育関係の棚にのみ置かれていた。これでは中高生の目にはとても触れそうにない。若い世代の近くにいる大人はぜひ、本書を必要とする人が手に取れるような場所にそっと置いておいていただきたい。それはきっと、不安を感じている若い誰かの支えになるはずだ。かつての私がそうだったように。