仕掛学 人を動かすアイデアのつくり方
著 者:松村真宏 著
出版社:東洋経済新報社
ISBN13:9784492233733

仕掛学 人を動かすアイデアのつくり方

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

駒田紘史 / 足立区立東和図書館
週刊読書人2021年2月26日号(3379号)


 新型コロナウイルス感染症の流行により,新たな生活様式の実践が求められている。私自身もこの状況で図書館をどのように利用してもらうかを悩む毎日を送っている。一人一人の行動の変容を求められている中,ふと思い出したのがこの「仕掛学」という本だ。

 仕掛けと聞いて,皆さんは何を思い浮かべるだろうか。策略やたくらみ,仕掛けるという意味合いのものだろうか。本書では,何らかの問題を解決するために,人の行動を変えるきっかけや後押しとなる“仕掛け”を題材としている。例えば,外出先でkcal表記が付いている階段を見たことはあるだろうか? 普段エスカレーターを使っている人もふとした時に,昇ってみたという方もいると思う。何気ない表記だが,気が付くと私たちが取る選択肢を増やしている。それが本書で扱っている仕掛けの一つである。この仕掛けでは,エスカレーターの利用者を減らし,階段へと誘導することができ,混雑の緩和などにつながっていく。

 本書の魅力は,仕掛“学”という名前の通り,著者である松村真宏氏による,世の中にあるさまざまな仕掛けの体系的な分析や解説にある。仕掛けの仕組みや紹介されている実例を読み進めると,仕掛けられているばかりじゃなく,読者の側も仕掛けを考えたくなるのでないだろうか。本書の終盤には仕掛けのアイデアを考える方法が記載されており参考になる。松村氏考案のアイデアも紹介されており,ユニークで興味深い。

 図書館で勤務していると,さまざまな人が思い思いの利用の仕方をしているのを見ることができる。あの本棚を見ている人には,この棚の本も見てくれないだろうかと思うことも多く,何か“仕掛け”られないかと想像を膨らませている。さまざまな行動変容が迫られる機会だからこそ,新たな行動の提案をしたい人にお勧めしたい。