女性作家は捉え返す 女性たちの物語
著 者:西田谷洋
出版社:ひつじ書房
ISBN13:978-4-8234-1047-5

「女性」文学評論の意義

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

松本のぞみ / TRC物流管理部
週刊読書人2021年4月9日号


 小学校・中学校と国語の授業で読んできた物語を、どれほど覚えているだろうか。そのなかに女性作家の作品は、どれくらいあっただろうか。男性優位社会である日本において、女性作家の台頭に付随し作品研究も盛んになりつつあるが、一方で教材となった作品についての研究はいまだ少ないという。本作はその現状を打破するべく書かれた、教科書に掲載された女性作家についての文学評論である。国語教育を通して少なくとも一度は読んだことがあるだろう、女性の作品についてとりあげる。タイトルの印象から、フェミニズムやジェンダー批評に重きを置く内容なのかと想像したが、そういった内容については一部にとどまる。

 Ⅰ章は安房直子について、Ⅱ章はあまんきみこ、IV章は小川洋子について解釈を探る。どの章でも教科書的でない読み方を試みており、授業で習ったのとは違った雰囲気を見せる各作品を再読したくなる。以上に対してⅢ章は「儀礼・儀式とステージ」と題し、少女漫画、アニメなど、いわゆるサブカルチャーや、現代の女性作家の作品が対象となる。特に山内マリコの作品を取り上げた節「らしさを生きる/らしさに抗う」 では、彼女の作品が次々と読解されるのだが、現代の日本女性の生きづらさが簡潔に言語化され、圧倒される。フェミニズムについて専門書を読むのも有用だが、フィクションやその研究を通しても学ぶところがあると考えさせられた。

 作中でも触れられるが、「男性」が「女性」について解釈するとき、「男性」の目線によって「女性」の主体性が奪われ、ただの鑑賞や搾取の対象として塗りつぶされてしまう事実がある。本書の著者も男性であり、その問題を認めているが、教科書に載る「女性」作家だけを取り上げること自体が、今までの文学研究ではなかったことであり、男性優位な日本社会を変える一歩になっている。自分の幼少期を振り返ってみると、作家の性別を意識して授業を受けたことも、読書したこともなかった。子どもの頃のように、どんな性別に対しても等しい社会になるよう祈りながら、女性作家を読み直したい。