入門 世界の民族楽器
著 者:若林忠宏
出版社:東京堂出版
ISBN13:978-4-490-21039-2

音楽とはそもそも何かを考えさせられる

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

辻和人 / TRC仕入部
週刊読書人2021年4月9日号


 これは偏見なく幅広く音楽を楽しみたいという人には堪えられない本だ。著者は「世界120以上の地域の音楽、民族楽器、900種」を演奏する、民族音楽のスペシャリスト中のスペシャリストである。

「入門」と銘打たれているが、楽器の特徴をただ単純に書き連ねたものではない。楽器の種類、音の出る原理、歴史、民族音楽の現状と未来に対する考察など、全方位的に項目が設定され、深い知見が惜しげもなく披露される。竹山道雄の名作『ビルマの竪琴』は「大嘘」で、ビルマのハープ、サウン・ガウでは「埴生の宿」が演奏できない、という指摘は目からウロコだった。また、「音楽は楽しむもの」という感覚から外れた音楽もあり、東アフリカの「親指ピアノ」は長旅の辛さを紛らわすための実用的な楽器であるそうだ。

 学術的な説明はもちろんのこと、長い経験によるエピソードの数々は実に貴重。音楽は人の必要とともに生まれ、社会とともに進化していくことが全編にわたって熱く語られていく。いろいろな地域の音楽が聴いてみたくなると同時に、音楽とはそもそも何かということを根底から考えさせられる一冊だ。