浅草迄
著 者:北野武
出版社:河出書房新社
ISBN13:978-4-309-02921-4

昭和への憧れ

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

澤田伊織 / TRC営業デスク
週刊読書人2021年4月9日号


 本の感想としては、昭和は凄い、の一言です。私にとってビートたけし(北野武)は昭和の代表で、性格豪胆、発言大胆なイメージです。テレビで見かけると、よく過激な発言や暴走をしています。ただなぜか同じ職種の芸人のみならず、多くの方から尊敬されている人物です。

 私がまだ生まれてない時から、彼の人生は破天荒という言葉がぴったりです。世間的にも法的にも悪いおこないをしていましたが、やらかしつづけても芸能界を生きています。世間からはそういうことをする人物と評され、嫌われつつも多くの人に好かれているのではないでしょうか。その生き様こそが、私の中では昭和の代表なのです。

 彼の個人的に好きなエピソードとして、後輩芸人の書籍が芥川賞を取った時、メディアの前で堂々と嫉妬という感情をあらわにしました。彼の全てを知っているわけではないのですが、生き方や作品を知ると、いつの間にか憧れになっていました。私は彼のように、堂々と嫉妬をあらわにするといった事は絶対にできません。なりたくてもなれない憧れの一人です。

 エッセイには、彼の幼少期から若手芸人だった頃までが書かれています。内容としては現代の価値観とは一切合っていません。私の価値観とも合いませんし、そこは生まれた時代や環境が違うというギャップを強く感じました。生き様は憧れますが、絶対になれません。ただ彼の話は読んでて笑いが止まりませんでした。最後の一文まで、彼が芸人であると意識させてきます。

 エッセイを読み終えると、二十歳になった頃背伸びして入った居酒屋で、友人と頼んだもつ煮とチューハイを楽しみたくなる、そんな一冊です。