里山風土記 山野草編
著 者:高久育男
出版社:国書刊行会
ISBN13:978-4-336-07038-8

結果を感じろ、共感者よ、行動せよ

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

船木園子 / TRCデータ部
週刊読書人2021年4月23日号


 この本は、著者が、時代とともに荒れ果てた「里山」を整備するため、栃木県那須町のとある里山で孤軍奮闘した15年の活動の結果を、失われた日本の原風景と、「山野草」のカラー写真とともにまとめたものだ。2018年に産学社から刊行された『里山風土記[樹木&草花編]』に続いて2冊目。今回は、再生した里山のうち、山野草をとりあげた。600m圏内だけで300種以上もあったそうだ。識別できないものは載せなかったというので、全体ではいったいどのくらいの種類が再生されたのだろう。

 本の大部分は、再生した植物(山野草)の紹介が写真付きで掲載され、300種以上ある植物に1つ1つ、観察していくうちに、調べていくうちにわかってきたと思われるような紹介の文章が書かれていた。調査フィールドの説明では、4つエリアを選定してビフォア・アフターを紹介している。つる植物や、竹でうめつくされていた林が、見通しがよく日当たりがよい、木漏れ日をうける林に変わっていた。「荒廃里山林整備実践報告」では、信じられないゴミと、その量と、片付けの大変さが書かれていた。

 著者の高久育男氏は広告業、水処理業をへて、自営業に進み、オーディオ関連機器の製作、無垢材を使った家具の企画製作請負業を通じて樹木と山野草への関心を深め、2004年から里山の再生に従事したそうだ。

 著者は里山の荒廃をものすごく憂いていたが、今里山再生の活動をしている団体は、結構あったのではないか? と、まずは思ったのだが、「荒廃里山整備実践報告」のゴミの捨てられ方などを見ると、団体だけがいくらあっても、地域の皆が意識しないと、里山は成り立っていかないのだとわかった。

 自分のこととして感じられるような、この場所や、再生していく活動の情報を、もっともっとと思いながら読みだした本書だが、読み進めていくうちに、だんだんとらえ方が変わってきた。1人だからすぐ始められるのでは? また、里山が日本人にとって大事だと気が付いた人が、その土地、その人の条件内でできることを自分で考えていけと言っているのではないかと思うようになった。

 著者は、里山が本来の機能と価値を発揮するためのキーワードは「継続」だという。その「継続」を裏付けるには、里山という空間が、経済システムに取り込まれる仕組みを作ることが必要だとも。誰もが里山を利用しながら、(以前と同じ形でないにしろ)暮らしていくことが求められている。

 この本は、Howtoとして、活動の記録として読むものではなく、たった1人でも15年つづければ、これだけの結果が残せる、それに共感した人は自分で行動を起こせ、といっているように思えた。また、自然と離れてしまった日本人が、自然を利用し向き合うことで得るものがあることを、実感として教えてくれる。