NewsDiet 情報があふれる世界でよりよく生きる方法
著 者:ロルフ・ドベリ
出版社:サンマーク出版
ISBN13:978-4-7631-3860-6

ニュースフリーという新しい生活様式

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

重田智恵美 / TRC物流管理部
週刊読書人2021年5月7日号


 ニュースは私たちの生活の至る所に溢れている。朝テレビをつければお決まりの情報番組、電車に乗れば扉の上に電子掲示板、そしてスマホという媒体を通して我々のポケットやベッドの中までそれは入り込んでくる。自分たちで情報を取りにいっていると思いながら、私たちは知らず知らずの内に情報の渦に飲み込まれて自分の時間や人生までも見失っているのではないか。そんなことを考えさせられる一冊に出会った。

 元々はニュース中毒者であったという著者は2010年以降継続してニュース断ちをしており、自らの経験や学術的見識に基づいて「ニュースがいかに人間にとって毒であるか」ということを一貫して主張している。それは、ショッキングな映像で脳を思考停止し、情報を鵜呑みにさせることで人々から時間や思考力を奪っていくものであると。物事の背景や繫がりは無視され、一部を切り取った表面的なニュースを受動的に受け流しているだけでは、思考力は養われない。それどころか短い内容の文章ばかりを読み続けると、人間の脳はそれに合わせて構造を変化させていき、その結果、集中力を保ちながら長い文章を読み続ける能力が次第に弱まっていくのである。また、豊かな情報を瞬時に取り込むことの出来る環境は、注意力が散漫になるという危険性を含んでいることも指摘している。

「ニュースの洪水に身を任せてはいけない」と著者は語る。とりわけハイパーリンクという魔法のようなツールを手にしたネットニュースでは、あなたの興味がある話題を判断・選定し、次から次へとニュースを見せてくる。だが、何を探すのかはあなた自身が決めなくてはならない。進む道を定めるのはあなた自身でなくてはならない、という言葉には著者が最も伝えたい思いが込められている。現代で主体的に生きるには情報社会と自分の関係性をきちんと構築することを避けることはできない。さらには、自分には関係のない情報を切り捨てる勇気も必要だ。世界の裏側で起こる出来事を心配していても、あなたに出来ることは残念ながらゼロに等しい。それならば、自分に関わりのあることや本当に興味のあることについて深く学んだ方が人生は豊かになり、あなただけの時間を取り戻すことができるだろう。

 2020年は、新型コロナウイルスに関する報道に気をとられ、一喜一憂し、疲れてしまった人も多かったのではないか。本書のサブタイトルは、「情報があふれる世界でよりよく生きる方法」である。ニュースを断つ選択も、より豊かに生きていくための手段の一つだ。最終的にこれからニュースとどう付き合っていくかを決めるのは自分自身である。だが、本書を読むことで改めてニュースとの付き合い方をじっくり考えることは、きっとあなたの人生を豊かにするきっかけとなるはずだ。