平成16(2004)年
2月11日 吉野家が牛丼販売休止へ。
BSE問題で米国産牛肉の輸入が禁止されたため。牛丼から豚丼へ。
「関ヶ原」の決算書
著 者:山本博文
出版社:新潮社(新潮新書)
ISBN13:978-4-10-610859-4
「関ヶ原」の決算書
図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)
週刊読書人2021年4月23日号(3387号)
子どもの頃から戦国時代が好きだった。テレビや漫画,小説・ゲームなど,多様なメディアで取り上げられているのを自然に受け取り,好きになっていたのである。本書のタイトルを目にしたとき,心が躍った。
さて,人が生活をする以上,お金がかかる。それが戦国の世で,ましてや戦が起きたならば,金額が大きく動くのは明白である。天下人・豊臣秀吉亡き後,日本を東西に二分する天下分け目の決戦である「関ヶ原合戦」は,1600(慶長5)年に起こった。本書は,この戦を収支の面から白黒をつけようと取り組んでいる。
序章では,まず戦を起こした場合の,戦国大名と豊臣秀吉での兵糧確保の違いが語られる。ここに「腹が減っては戦ができぬ」と言わんばかりに,兵糧を重視した秀吉の慧眼を見ることができる。また,貨幣と米の換算など,収支の算出に必要な基準が明示される。
第一章から第五章までは,史料に基づき,「関ヶ原合戦」に至るまでの経緯から戦の決着までを分かりやすく解説している。専門的に読むならば,出典に当たるのもよいだろう。また,これらの章の中心にいるのは,島津家である。「島津家は,関ヶ原合戦において,西軍に参加しながらも,なぜ領地の減封や改易を免れたか?」という魅力的な謎とともに歴史の流れを追うことができる。
終章では,いよいよ関ヶ原の収支決算が明かされる。序章を思い起こして,文章とともに収支を計算するのも面白い。本書は,お金の流れで「関ヶ原合戦」を追うという,従来とは別の角度で物事を見ている。それは,物事は一面的なものではなく,さまざまな見方があるということを教えてくれる。日本史上有数の戦である「関ヶ原合戦」。どれくらいのお金が動き,誰が損をして,得をしたか? 本書を是非読んで確かめてほしい。