アスリートは歳を取るほど強くなる
著 者:ジェフ・ベルコビッチ
出版社:草思社
ISBN13:978-4-7942-2415-6

トップ・アスリートの新常識

図書館発!こんな本が面白い【書評提供:図書館流通センター(TRC)】

岡本侑士 / TRC中四国支社 ブックキャラバン担当
週刊読書人2021年7月9日号


 トップ・アスリートの寿命は、一般人と比べて明らかに長い研究結果が出ている。

 と言われると、嘘だろ⁉と疑いたくなりませんか?

 男子プロゴルフ、50歳のフィル・ミケルソン選手が今年の全米プロ選手権を優勝。

 男子プロテニス、今年40歳のロジャー・フェデラー選手が昨年2度の手術をし、今年復活。

 この本には、ここ最近、スポーツ界を騒がしている、ベテランアスリートの活躍に焦点を当て、そのベテランアスリートの分析から明らかになった最新スポーツ科学を、我々一般人が運動をする際に取り入れるべきことは何か?が書かれています。

 アスリート界では、かつては、チャンピオンになるのは、ジムに最後まで残っている人だと考えられて来ましたが、それが今では、最初にジムから出て行き、身体のケアに時間を掛ける人だと言われるように変化しました。これは、一般人にも当てはまり、1週間に数時間だけしか運動に時間を割くことができない人は、走る時間をもう30分伸ばして、ストレッチはやめようという誘惑にかられるかもしれない。しかしもし、あなたが怪我をしがちであれば、それはしてはいけない交換取引だと強く言われています。

 また、飛行士についてのこんな格言が書かれています。「高齢なパイロットはいるし、大胆なパイロットもいるが、高齢で大胆なパイロットはいない」。無理なこと(体に良くないこと)をすると長続きしない。ということを言っていますが、この考えを実践していた我々がよく知るトップ・アスリートがいました。

 それは、現在、シアトルマリナーズで、会長付き特別補佐兼インストラクターをしているイチローです。彼は現役時代、故障のリスクが高い、頭からのスライディングはしない。と公言していました。なんとオリックス時代は1度のみ。メジャーリーグでは、10年目にして初めて禁を破ってダイビングキャッチをした時は、ニュースになるほどでした。

 ちなみに、イチローが世界記録の4257安打を達成したのは、43歳の時。大きな故障無く長年ヒットを打ち続けるには健康な状態で打席に立つ必要があるということを体現した人ですね。

 イチローやフィル・ミケルソン、そしてロジャー・フェデラーらは、長くトップで活躍するために、完璧に管理された毎日を送っています。適度な負荷を掛けたトレーニング、カロリー計算された良質の食事、十分な心と体のケア。そんな彼らと一般人を比べて、どちらが体に良い生活を送っているか?どちらが長生きするか?と改めて聞かれると、トップ・アスリートに軍配が上がるのは当たり前ですね。

 トップ・アスリートが使用する技術や情報が、一般人まで降りてくるのは17年かかると言われているそうです。是非ともトップ・アスリート界の常識、一般人の非常識が書かれている(と思われる)この本は、更なる向上心がある、あなたに手に取ってもらいたい1冊です。