雪のことば辞典
著 者:稲雄次
出版社:柊風舎
ISBN13:978-4-86498-060-9

雪のことば辞典

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

上杉朋子 / 真庭市立中央図書館, 日本図書館協会認定司書 第 1122 号
週刊読書人2021年7月30日号(3400号)


 取り上げられる数々の「雪のことば」が,銀世界だけではない,思いがけない世界へと誘ってくれる一冊である。

 本書は民俗学者である著者による読む辞典だ。方言やことわざ,雪の降る音や和菓子名,日本酒名,地名,名字,俗信といった,自然科学,文化・文明など,さまざまな分野から雪に関することばを集めている。豪雨と同じように大雪も害をもたらすことがあるが,「雪は豊作のしるし」「大雪にケガチ(飢饉)なし」など,雪のことばには恵みを表すものも多いことを知ると心が和む。

 年中行事などをテーマにしたコラムも所収。著者にはかまくらに関する著作があることからコラムで詳しく取り上げられており,読みごたえがある。コラム「雪のつく歌」(p.244)では,天明期の上方地唄や最近の歌まで,曲名に雪のつく93曲が紹介される。なぜこの93曲なのか,興味がわいて調べてみた。名曲やカラオケでのランキング等いろいろ出てくるなか,J-STAGEで荒木紀人ほか「『雪』がつく歌謡曲名について」(『2006年日本雪氷学会全国大会講演予稿集』)を発見(2021年2月8日確認)。こちらは180曲。本書の選曲がますます気になる。

 最後に,ぜひ見てもらいたいのが「雪下ろし」の項だ。本書には三つ登場する。① 新潟市の除雪用具の名称,② 新潟県で十二月中旬頃に雷と風とを伴って降る雨の呼称,そして③ 「全国的に関心が高い」が「相場が公表されていない」雪下ろしの手間賃を調査した結果,なのだ。三つめの項目は「雪下ろし料金は全国各地様々である。依頼する場合は見積書を取ってから頼むことが肝要」(p.246)と結ばれる。これは早く誰かに案内したい,あなたもきっとそう思われることだろう。