新写真論 スマホと顔
著 者:大山顕
出版社:ゲンロン
ISBN13:979 4 907188 35 1

新写真論 スマホと顔

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

飯田朋子 / 神奈川県立図書館, 日本図書館協会認定司書 第 1172 号
週刊読書人2021年7月30日号(3400号)


 去年の初め,一眼レフのカメラを買った。目についたものをスマートフォンですぐに何でも撮ってしまえる時代,改めて写真を撮ることを特別だと感じたくなったからだ。新しいカメラを首から下げたとき,小さい頃,母がカメラを構えて写真を撮ってくれたときのことを思い出した。カメラに触り,ねだって写真を撮らせてもらったときや,現像した写真を一枚ずつ見るときの気持ちまでも。

 この本は,工場や団地などの建造物を中心に撮る写真家が,人や社会とのかかわり方の変化から写真とは何かを論じている。スマートフォンは誰もが手にしている高性能なカメラで,目に見えたものは手軽に記録でき,すぐに見返し,気に入らなければ消すこともできるようになった。「自撮り」した顔も,よりよく見せられるように加工できる。撮った写真はSNSで多くの人にシェアされ,反応も瞬時に返ってくる。読み進めながら,写真のあり方も,カメラのあり方と共に変わっていることが改めて感じられる。

 著者は,スマートフォンのカメラが「眼」としての光学センサーとAIを備え進化してきたことを「カンブリア大爆発」に例え,SNS時代の写真を「人間のためのものではなくなった,それ自体のシステムのことである」(p.264)という。その言葉に背筋がぞっとした。写真そのものだけでなく,撮り手や被写体,写真には写らないが感じ取れるものまでもが,大きくうねって進化するシステムの中に取り込まれたような気がしたからだろうか。

 かくいう私のスマートフォンにも,数えきれないほどの写真が収まっている。出かける機会が減り,カメラの出番もなかなかやってこない。自撮りをするのには抵抗があるけれど,今の自分の顔をカメラで撮ってみたら,どう写って見えるだろうと,この本を読み終えて考えている。