異世界に一番近い場所 ファンタジー系ゲーム・アニメ・ラノベの
著 者:清水大輔
出版社:パイインターナショナル
ISBN13:978-4-7562-5292-0

異世界に一番近い場所 ファンタジー系ゲーム・アニメ・ラノベのような現実の景色

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

宮本 歩 / 熊本県立天草高等学校
週刊読書人2021年8月27日号(3404号)


 高校図書館に勤務していると年に数回,必ず受けるレファレンスがある。「イラストを描きたいのですが,なんかいい本ありませんか?」

 いい本とはイメージを膨らませるヒントになる本であろうと解釈し,自然系? 都会系? お気に入りの映画やアニメはある? 鼻息荒く質問を繰り出すと「あ…もういいです」と,ナイーブでシャイな人々はたいてい去っていってしまう。そんな時「まず,これめくってみたら?」と,若干のゆとりをもって手渡せる本がこの本だと思っている。

 帯に「元ネトゲの住人が世界を旅して撮りました。」とあるように,ゲームやアニメの背景に登場しそうな風景をレンズ越しに切り取り,写真集に仕立ててある。撮影地はカンボジア・エジプト・インド・中国・台湾・チェコ・スコットランド。「はじめに」で仕事と睡眠食事通勤以外をゲームに費やしてきた,とある。だからこそ,同じ文化圏に生きている高校生の求めているイメージに合致するのだろう。一枚一枚おそらく丁寧に加工してあるだろうなと思わせる光の演出や,全く人影の映り込んでいない作品を眺めていると,「写真集」に分類することに躊躇される館もあるかもしれない。これは本格的な旅の写真集ではなく,あくまでも読み手の空想を駆り立てるための一冊である。

 「そう,こんな感じなんです! でも,もう少しこんな感じで描きたいので…」と読後に言ってくれたら,ご案内できる次の本が必要になる。ああ,そして果てしなく選書の悩みは続くのだ。

 この本も,近隣高校の司書仲間が教えてくれたものだ。潜在的なニーズにこたえられる次なる一冊を,今後も広く網を張って探し続けたいと思っている。