モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語
著 者:内田洋子
出版社:方丈社
ISBN13:978-4-908925-29-0

モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

吉田悦子 / 天草市立中央図書館
週刊読書人2021年9月10日号(3406号)


 「モンテレッジォ」は,イタリアのトスカーナにある小さな山村である。試しに,旅行雑誌のイタリアを見てみたが,一文字も見つけられなかった。そんな村に,本と本屋の原点があるとは!

 本書は,ジャーナリストの内田洋子氏が,「本の行商人」の子孫たちを丁寧に取材し,小さな村の歴史をまとめた渾身のノンフィクションである。

 籠いっぱいの本を担ぎ,イタリアじゅうを旅した行商人たちのおかげで,各地に書店が生まれ,読む文化が広まったという。「なぜ山の住人が食材や日用品ではなく,本を売り歩くようになったのだろう。」(p.7)著者ならずとも,読者の好奇心をかき立て,冒険の旅へと誘う。天災,活版印刷,禁書など,歴史をひもときながら謎解きは進むが,その道のりは,この山村のように険しい。著者と一緒に苦楽を味わってみてはいかがだろうか。行商人の魂に触れる喜びを感じながら。

 イタリアにも本屋が選ぶ文学賞があり「露天商賞」という。発祥地はモンテレッジォだ。第1回受賞作品(1953年)は,ヘミングウェイの『老人と海』。2020年,この伝統ある賞の「金の籠賞」を著者がイタリア人以外で初めて受賞した。

 本書の表紙は,こんな山奥からと一目でわかる村の全景。カバーには,籠いっぱいの本と両手にも本を持ったたくましい行商人の挿絵。栗の森のような質感の見返し。細部まで凝った装丁に,モンテレッジォへのリスペクトを感じる。本を閉じれば,天アンカットが美しい。どこまでもbravo(ブラーヴォ)なのだ。モンテレッジォを誇りに思う人々や内田氏が紡ぐ極上の言葉たちに,メモを取る手が止まらない。本に携わる人を感奮興起させ,励ましてくれる一冊である。

 子どもたちが登場する『もうひとつのモンテレッジォの物語』(方丈社 2019)も,ぜひ手に取ってもらいたい。物語は明るい未来へと続く。