マイホームの彼方に 住宅政策の戦後史をどう読むか
著 者:平山洋介 著
出版社:筑摩書房
ISBN13:978-4-480-87909-7

マイホームの彼方に 住宅政策の戦後史をどう読むか

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

森谷芳浩 / 神奈川県立図書館
週刊読書人2021年9月17日号(3407号)


 住まいの広さやデザイン,構造など建築的な特徴が,国や地域,時代によって異なることは容易に想像がつく。では,その住宅を支える法や制度,政策の場合はどうなのか。本書はこうした観点に気付かせながら,日本の住宅事情を紹介する。

 著者は,日本の住宅政策の戦後史を「持ち家社会」の形成とその基盤解体の過程とみる。終戦後から70年代にかけて,国は住宅金融公庫法,公営住宅法,日本住宅公団法の3本柱で所得階層別に住宅を供給し,なかでも中間層への持ち家取得に力を入れる。高度成長期後は住宅ローンの普及を図り,その傾向をさらに強める。一方,公営住宅の整備など所得再分配の政策は,他の先進諸国と比べ日本では極めて弱いという。結果として持ち家取得に向かわざるを得ないのだ。

 なぜ住宅の所有を強いるのか。その理由として,経済を支える役割を個人の債務に担わせる政策があるという。これは「民営化されたケインズ主義」とも呼ばれ,国債の発行により景気対策を行う公共事業から移ってきた手法だといわれる。

 もうひとつは,住宅が資産価値を持つため,その所有は家族も含めた社会保障の代替になり得る点だ。そういえば,昨年,菅首相が掲げた政策理念に「自助,共助,公助」とあったのは記憶に新しい。この順に重きを置くなら,住宅をめぐる社会の実相としては十分に具現化していたのだ。

 本書の後半は,現在の経済成長が望めない時代の住宅事情を描く。そこでは中間層が減り「蓄積家族」「食いつぶし家族」「賃貸家族」というように,住宅の格差を生み出すメカニズムが紹介される。自助に頼らないシステムの確立が,住宅研究を専門とする著者のメッセージである。

 当初新書として企画された本書は,その分量を超え単行本となった。読みごたえがあり,この分野の研究へも関心が高まりそうだ。