優しい死神の飼い方
著 者:知念実希人
出版社:光文社
ISBN13:978-4-334-77289-5

優しい死神の飼い方

書評キャンパス―大学生がススメる本―

眞鍋歌萌 / 甲南女子大学人間科学部4年
週刊読書人2021年10月29日号


「死神」に、どんなイメージを浮かべるだろうか? 骸骨? 大きな鎌? いずれにしてもできれば会いたくない存在だろう。だが私はこの本を読んでから、死神像が180度変わり、人間を救うヒーローなのでは、と思う様になった。

 この作品は、上から目線で天然キャラな死神と、人間が交流するハートフルミステリーだ。

 この世に「未練」を残したまま亡くなると、地縛霊になりあの世へ導けないため、人間に接触し「未練」を解き放つように、と依頼を受けた死神のレオ。地上のホスピスに左遷……ではなく派遣されることとなった。地上では犬の姿を借りることになったレオが彷徨っている所を、心優しい看護師に助けられ、そのまま看護師が勤めるホスピスへ。そこは、もともとレオが派遣される予定のホスピスであり、「腐臭」に満ちていた。

「腐臭」は濃ければ濃いほど、「未練」に縛り付けられている証拠であり、死後地縛霊になる確率が高まる。レオはこのホスピスには4つの「腐臭」が漂っていることを突き止めた。一人目は駆け落ちをしようとした恋人に裏切られた過去を持つ男、次に殺人容疑で指名手配されている男、さらに画家を目指していたが絵が描けなくなり筆を置いてしまった男。レオは3人の患者達が寝ている隙に夢の中に入り込み、過去の謎を解決することで、未練から解放した。

 しかし4つ目の「腐臭」の患者が見当たらない。これは一体誰のものなのか。

 そして、患者達の謎を解き明かすにつれて、このホスピスをめぐる1つの事件が明らかになってくる――。

 現役内科医である著者が書くこの作品は、どこかリアルで、だからこそ心に響く。死をテーマにした作品なのに重すぎず、ページを捲る手が止まらないのは、テンポ良く進む内容と、犬の姿をしたレオの存在が大きいのかもしれない。本書では、「死神」を「犬」の姿に変えることで、読む時に情景が頭の中で思い浮かべやすくなっている。

 レオが患者にかける言葉は、少し乱暴だが心に響くものがある。特に印象的なのは、「自惚れるな『人間』! お前らは肉体という『仮住まい』を借りて、この世に存在しているに過ぎない。いつその『仮住まい』を返すかはお前達が決めることではない。お前がするべきことは、残された時間の短さを嘆くことなどではなく、その限られた時間の中で精一杯生きることだけだ」という言葉だ。レオのこの言葉を読んでからは、嘆くことよりチャレンジしてみることの方が増えたように思う。

 いつか私にも、レオの様な死神が来てくれたらいいのに、と思うほど、どの章もレオが患者の未練を解き放つ術があたたかく、心優しい死神だということが、紙越しに伝わって来た。タイトルに興味を持った方、犬が好きな方、死神の飼い方を知りたい方など、沢山の方々にこの本を読んでもらいたい。

 本書を読んで、皆さんも死神の飼い方を学びませんか?

★まなべ・かほ=甲南女子大学人間科学部4年。アニメや漫画、ゲーム。ドラマにアイドル、もちろん本も。沢山の事に興味がわき、突き詰めていくのが趣味です。