イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 数学のしくみ
著 者:加藤文元 監修
出版社:西東社
ISBN13:9784791629459

イラスト&図解 知識ゼロでも楽しく読める! 数学のしくみ

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

民安園美 / 幕別町図書館
週刊読書人2021年10月8日号(3410号)


 文系の人のために書かれた理系の本を見かけることがある。その反対の視点で書かれた本はめったに見かけないことからすると,文系の人の数学に対する苦手意識が根強くあることがうかがえる。

 本書では,英会話の学習が単語や文法の暗記ではなく,たくさん会話をすることが重要であるように,単に公式を覚えるのではなく,たくさん数学に接することで数学の楽しさを知ることができると説いている。

 高速道路のカーブは,最初はほぼ直線で,先に進むごとに少しずつカーブがきつくなる「クロソイド曲線」で設計されている。ハンドルを同じ速度で自然に操作することが可能となるのはそのためである。その曲線は,ジェットコースターの垂直ループにも利用される。直線軌道から急にカーブに入る円弧とした場合,急激に体に負担がかかり首などを痛めるため,クロソイド曲線が体にやさしい曲線であることを理解しやすく説明している。日本の建築や芸術に使われる白銀比の「1:√2」の比率は,ドラえもんやアンパンマンなどのアニメキャラクターやA判・B判の用紙に用いられている。「三平方の定理」で知られる数学者のピタゴラスが音階に数学的なルールがあることを発見したことで,ギターなどの弦の長さに基準ができ,音のデジタル化には18世紀末のフランスの数学者フーリエが提唱した「フーリエ変換」が応用されていることなど,身の回りにある数学が平易な説明文とイラスト,図解で解説されていて,数学の面白さに触れることができる。

 東京工業大学理学院数学系教授である監修者の加藤文元氏は,数学に関する著作を多数手がけており,『宇宙と宇宙をつなぐ数学 IUT理論の衝撃』(KADOKAWA 2019)で,第2回八重洲本大賞(八重洲ブックセンター主催)を受賞している。