デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方
著 者:カル・ニューポート 著 池田真紀子 訳
出版社:早川書房(ハヤカワ文庫)
ISBN13:9784150505738

デジタル・ミニマリスト スマホに依存しない生き方

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

新井直也 / 埼玉県立小川高等学校
週刊読書人2022年1月14日号(3423号)


 ベストセラー『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン著 久山葉子訳 新潮新書 2020)は本校でもブーム。高校生たちが「俺のことじゃん」と笑い合いながらも手に取る。スマホの誘惑,SNSのしがらみへの漠然とした不安は,彼らにとって切実なもののようだ。

 しかし本を1冊読んだくらいで人は変わらない(実体験)。「スマホ脳」を自覚できても,体に染みついた通知チェック,ネット渉猟の習慣は抜けず。これではいけないと,リベンジのため選んだのが本書だった。が,一読して内容に驚いた。著者の最大の関心は「生き方」をめぐる哲学的な議論。スマホ世代の「幸福論」といった趣きで,危機感をあおるだけの啓発書とはひと味違う。

 そもそも初代スマホは「通話もできる音楽プレーヤー」という単純なコンセプトだった――とは本書の明かす真相。SNSやアプリは営利を求めて発達したものであり,私たちがなんとなく手を出したあげくついつい使ってしまうのは,そう仕向ける企業努力の結果。はじめから個人の意思に勝ち目はないと,著者は励ましを込めて語る。

 「寝室に持ち込まない」の類の続かないハック以前に必要なもの。それは書名が示唆するように,個人の人生観なのだ。スマホでの気晴らしや不要な交流を絶ったとして,代わりに何をするか?――この問いから,読者はしだいに「本当に大切なこと」(本書の文庫化前の副題でもある)の探究へと導かれる。ときおり挟まれるソロー『森の生活』の言葉も時を超えて背中を押してくれる。

 後半の実践的なアドバイスは一見荒療治。しかし知的な話題の後だと納得がいく。「実行する勇気は……」が自然な感想だが,反面「実行しないのはなぜ?」という自問も頭を離れず。本書の哲学的性格,著者からのエールの力強さゆえだろう。