比べて愉しい国語辞書 ディープな読み方
著 者:ながさわ 著
出版社:河出書房新社
ISBN13:978-4-309-30004-7

比べて愉しい国語辞書 ディープな読み方 国語辞書ほど面白い遊び道具はない!

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

石井一郎 / 町田市立金森図書館
週刊読書人2022年1月14日号(3423号)


 読売新聞2021年4月28日朝刊14面の記事の「帰宅してすぐに作れる『速攻ゴハン』を教わることにした。」という一文に目が留まった。「速攻ゴハン」とは何だろう。記事の内容から時間をかけず,すぐにできる料理と読み取れた。「速攻」の意味に「すばやく攻撃する」以外に「すばやくする」という意味が加わったことを本書で知る。著者によれば,「単にすばやくする意の「速攻」を最初に載せた辞書は二〇〇六年の『例解新国語辞典』第七版のよう」(p.26)だ。

 著者は辞書の収集・研究家で,1000冊の辞書を所有している。本書はウェブメディア「Zing!」に掲載した記事を改稿したもので,国語辞書を引き比べる楽しさを教えてくれる本である。

 本書では①漢字でどう書くか,②似た意味のことばの使い分け,③適切な言い換え表現,④明治の文学作品に出てくる難しいことば,⑤現代小説に出てくることば,⑥毎日の暮らしに密着したことばの六つの視点でベストな一冊は何かを検証している。検証に使われた辞書は16冊。この検証のほかに辞書にないことばの用例を集める楽しさを紹介しており,例として,「一ページ」を見出し語として載せる辞書が少ない理由の考察は興味深い。

 本書を読むと,国語辞書がみな同じでなく,それぞれ違うものなのだと気づかされる。いつの間にか国語辞書を引き比べたくなる。冒頭で取り上げた「速攻ゴハン」の「ゴハン」に「料理」という意味があるか手元にある国語辞書で調べてみた。「食事」の意味はあるが「料理」まで書かれていない。「食事」には「食べ物」の意味がある。また,昨年出版された『戦前尖端語辞典』(平山亜佐子編著 左右社 2021)の中のことばを使って,国語辞書の引き比べの読書会を企画してみたい。

 本書に国語辞書の見方を変えられた。