インプロがひらく〈老い〉の創造性 「くるる即興劇団」の実践
著 者:園部友里恵 著
出版社:新曜社
ISBN13:9784788517080

インプロがひらく〈老い〉の創造性 「くるる即興劇団」の実践

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

廣瀬恭子 / 千葉県立中央図書館
週刊読書人2022年1月28日号(3425号)


 千葉県柏市で活動する高齢者インプロ集団「くるる即興劇団」の実践を紹介・分析する本である。

 インプロとは,脚本や事前の打ち合わせなく共演者や観客とともに物語を生み出していく即興演劇のことである。それ自体が上演されたり演劇の創作過程で用いられたりするほか,演劇以外の場面で,教育や学習の手法として利用されることもあるという。

 本書は博士論文をもとに執筆された。著者は学生時代にインプロに出会い,生涯学習論・高齢者学習論を専門とした研究者である。2014年に「即興劇で学ぶコミュニケーション」という生涯学習講座を開き,2015年に講座参加者を中心に「くるる即興劇団」を結成,定期的な稽古と公演を持つようになった。参加者の大半は,著者の想定より高齢の70代後半から80代の方。身体能力や認知能力もさまざまである。

 高齢者の学習活動は,「健康づくり」「認知症予防」等の観点で語られることが多い。当事者の切実なニーズでもあるのだが,著者は,あらゆる活動が「できなくならない」ための訓練として意味づけられる場合,「健康」でない高齢者の参加が否定されるのではないかとの問題意識を持っている。

 本書では,インプロのパフォーマンスや劇団員へのインタビューを分析する。たとえば,劇団員がルールから外れた際に「新しいゲームが生まれた!」と受け止めるファシリテーター(著者)。または,「障害」のある劇団員についての周囲の劇団員の意識の変化。「その場限り」で構築され,失敗・勘違いや「できないこと」を生かすユニークな関係性を読み解いている。

 場の性質は違っても,図書館にも多くの高齢者が来館する。関わり方について考えるヒントになるのではないだろうか。