16 歳からの相対性理論 アインシュタインに挑む夏休み
著 者:佐宮圭 著 松浦壮 監修
出版社:筑摩書房(ちくまプリマー新書)
ISBN13:978-4-480-68399-1

16歳からの相対性理論 アインシュタインに挑む夏休み

図書館員のおすすめ本(日本図書館協会)

仲 明彦 / 京都府立洛北高等学校
週刊読書人2022年2月11日号(3427号)


 年に何冊か科学史関連の図書にも目を通すが,何度読んでも相対性理論を理解するのが難しい。

 本書は16歳の高校1年生鈴木数馬が,リケジョで科学部員の2年生渡井美月との出会いをきっかけに,相対性理論に挑んでいくという小説仕立てとなっている。部員の質の低下から廃部寸前の科学部。存続の条件として,顧問から相対性理論を的確に説明できることという課題が提示される。窮地の美月を助けるために,数馬は,自転車,スマホ,パンケーキなど,身近なものを使った思考実験を通し,相対性理論に迫っていく。

 ストーリーは取り立てたものではないが,一般の解説書とは違い,ストーリーを追いながら読者も一緒に思考実験に参加できること。多くの解説をそぎ落とし,特殊相対性理論,一般相対性理論の原理中の原理のみの解説に特化していることが,この本の特徴だろう。私にはそれまで読了した図書よりもイメージしやすい一冊だった。

 加えて100年越しにアインシュタインの予言が確認された2016年の重力波観測の発表のトピックを通し,相対性理論発見の意義,現在の物理学,天文学の到達点が理解できるようにも記されている。また,スマホの位置情報など,身近な事柄の中に相対性理論が生きていることもわかる。強いて言えば,「E=mc²」(特殊相対性理論からみちびかれる物質とエネルギーの式)が開いてしまった核兵器開発という負の側面にも一言言及があればさらによかったと感じる。

 すべての高校生がこの本を読んで相対性理論をスッキリ理解というわけにはいかないが,もし興味を持つ生徒がいれば,『ノーベル賞でつかむ現代科学』(小山慶太著 岩波書店(岩波ジュニア新書) 2016)を併せて紹介したい。歴史的背景から本書の内容を理解するには最適のガイドとなるだろう。